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メッツェンメチル

ヘタリア・京極堂シリーズ等の無節操な二次創作と、オリジナル。傾向等は最古記事をご覧下さい。
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2024/11/26(Tue)10:33

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米ベラ露10.

2009/05/10(Sun)20:50

十個目。
米も最初は大変だったよね、というお話。
ベラちゃんは今も大変そうだけれども。* * *

悪夢を見た。
どんな悪夢だったかは忘れた。
とにかく悪夢を見て――目が覚めた。
 
目が覚めたら、隣で金髪変態男が寝ていた。
 
鳥肌が立った。
 
 
「なんで――っ」
 
刺してやろうか、いや刺そう。
ていうかこれ悪夢の続きじゃないのかもしかして。
そう思って立ち上がろうとした矢先――男の手が、自分の服を掴む。
起きたのかと思って視線を落とすと、どうやらまだ起きてはいないらしい。
無意識に防御に走ったのかとも考えたが、それも違うようだった。
ようやく暗がりに慣れてきた瞳に写る男の表情は、まるで子供のように情けない顔をしていたのである。
 
傍から温もりの消える事を、一人を恐れる子供。
妙な既視感があった。
だから、一瞬戸惑ってしまった。
 
つん、と鼻につく臭いはアルコールの物だ。
そういえば昨夜は兄さんからウォッカが送られてきたのである。
調子に乗って男も一緒に飲んでいたが、ウォッカ原液はやはり身体に来たようだった。
軟弱め。
酔っ払ってベッドに潜り込んできた、のだろうか。
 
それに答えるように、男の瞳が軽く開く。
 
「――さむい」
 
舌足らずな口調は、酔っ払いのそれと同じだった。
自分は軽く舌打ちをする。
 
しかし一体何が寒いというのか、こんな恵まれた場所で。
そう思ったので尋ねる。
どうせ大した答えは返って来ないだろうと思いながら、失せてしまった殺意の代わりに。
 
昔、一人だったんだ、と男は言った。
ここは何もない荒野だったんだ、と。
ただただ広いばかりで少しも温かみのない世界に生まれたんだ、と。
人間達のほとんどが冬を越せなかった――そんな場所で。
 
今でも夢に見る、と言った。
そんな夜は酷く震えが走るのだ、と。
 
自分には、この男の苦労だとか、寂しさだとか、そんな物は少しもわからない。
そんな事を言っても自分の住む場所の方が自然は断然厳しいに決まっているし、今はこんなに豊かではないか、と言いたくなる。
くだらない、興味もない、共感もしない。
 
だけれど、身を震わしてしまう寒さは――確かに、共有に足るものだった。
 
あの寒さを、私は知っている。
それはきっとこの男の中にある寒さと、同じものだ。
 
だから布団にもう一度潜り込む。
男は母親に身を寄せるように、少しだけ身体を寄せてきた。
本当に不愉快だったのだけれど、私は拒絶しなかった。
きっと男の体が、殊の外暖かかったから、だろう。
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