九つ目。
長いよ。
露さまはいいおにいちゃん。
でもそれよりウクライナさんの方がいいおねえちゃん。
今回のコンセプト→白ろさまと白めりか
* * *
「やあアメリカ君、どうしたの突然?」
「はは、ベラルーシの様子でも伝えとこうと思っただけさ!」
「どうでもいいけどクレムリンに直接かけてこないでよ。すわ戦争かと国内が騒然としちゃった」
「別にいいだろ! 何の為の電話だい?」
「この為じゃないのは確かだね。大体ベラルーシの様子だったら毎日のように手紙が届くから問題ないよ」
「別にいいじゃないか! 実際の所、ベラルーシに君の兄さんと話したって自慢してやりたいんだよ」
「嫌がらせ?」
「いや、からかってるだけだぞ。ベラルーシを怒らせると面白いからな!」
アメリカの笑い声が電話越しにはっきりと聞こえる。
本当にうざいなあちょっとぱーんってなってくれないかなあと思った。
しかしこういう彼の性格を自分が利用しようとしているのは確かなのである。
都合がいいから感謝ぐらいはするべきなのだけれど、嫌いな物は残念ながら嫌いなままだった。
「ところで君の所では一体どんなもの食べてるんだい? 俺の家の食事は口に合わないらしいんだよ!」
「君の胃は化け物仕様だからね。一体何食べさせたの?」
思い出し思い出し男が語る単語。
油、肉、肉、油、油、肉、肉、肉、肉。
聞いてて気持ち悪くなりそうだった。
「あのさあアメリカ君、君今まで人に食事振舞った事ある?」
「勿論あるぞ!」
「その人達どんな反応してたの?」
「日本は美味しいですねって笑って食事を残したな。彼は少食だからな! フランスは勝手に自分で料理作って食べてたからわからないぞ。イギリスは上手いって食べてたな」
「…………」
十中十、日本はお世辞でフランスは食べれなくてイギリスは味音痴だ。
そう思ったが態々指摘してやる事もなかった。
しかし末妹の行く末だけはかわいそうになったので(そもそも自分も要因の一つではある)、量を減らして野菜を増やす様に言っておく。
ウォッカも送るよ、というと殊の外素直な感謝の声が聞こえた。
それがまた気に障るのだが、そんな事は言わない。
「しかし意外にちゃんと"お兄ちゃん"してるんだな!」
「はは、だってお兄ちゃんだもん」
「いやあ、でもベラルーシの中では"兄さん"以上の存在みたいだぞ」
「うーん。そんな事ないんじゃない?」
そんな事、あるけれど。
きっとベラルーシにとって僕は、兄である前に唯一で、家族である前に絶対なのだ。
世界そのもの、と言っても過言ではない。
それは自慢とか自惚れとかとは無関係に、判断できる事。
大体好ましい訳がないのだ、自惚れと取るのはあまりに筋違いだった。
迷惑しているというのも正しい側面ではあるし――何より。
可哀想だ。
とても、とても。
そういう感情を持つのは、自分にとって珍しい事ではない。
きっと――姉を除いて、誰も信じてはくれないだろうけれど。
姉は、ロシアちゃんは優しい子、とよく言った。
それは姉としての欲目が少なからず入った、間違った情報だと思う。
大勢がいうのと同じに、自分は微塵も優しくないのだ。
ただ――今している行動は、優しさ、と捉えれる物なのかもしれない。
あるいは家族愛、とでも言うような。
「とにかくベラルーシを頼むよ、アメリカ君」
大事な大事な妹だからさ。
その言葉に、嘘はないから。
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