八つ目。
米の家の料理は慣れてない人に辛いような気がする。
なんというか肉が……すごく…・・・硬いです……
突然栄養のあるもの食べたら駄目だよ! 胃がびっくりするよ!
* * *
眠っているベラルーシは時々呟くようにロシアの名前を呼んだ。
時たま別の名前である事はあったけれど、ほとんどは彼女の兄の名前である。
だから多分、目覚めた瞬間ベラルーシが「アメリカ――?」と呼んだ事に、俺がどれだけ喜んだのか、きっと彼女は知らない。
知らなくてもいいと思っている。
「初めて名前で呼んだな!」
「――失言でした不細工うんこ野郎」
「ははは! 元気になったみたいで良かったぞ!」
しばらくはゆっくりすごそうな、と言うと、少しきょとんとされた。
「どうしたんだい?」
「常識あったんですね」
「ははは、失礼だな!」
彼女から所謂"家"を奪ったのは何を隠そうこの自分である。
自分との闘争の結果、彼女達の家は崩壊し、決壊し、彼女は一人になった。
後悔をするつもりはない。ヒーローにそんな物は無用の長物だ。
あそこで崩壊させ、決壊させなければ――世界自体の危機の可能性もあった。
ただ、少しだけ複雑な思いがしただけの話である。
「アイス食べるかい?」
「視界に入るあのバケツみたいなのがそうでないのなら喜んで」
「うん? 何でだい?」
そのぐらい気づいてください低能脊髄反射男、と言う台詞。
適度に具合が悪い方が舌の滑りがいいらしかった。
「ふうん。まあいらないなら俺が食べるけどな!」
折角買ってきたのに残念である。
手を伸ばしてカップを手繰り寄せ、スプーンで掬って口に――
運ぶ前に、ベラルーシの口につっこんだ。
「っ!」
何するんですかこの馬鹿餓鬼!
鋭い声だった。
「えーだって」
食べたそうにしてたぞ、と言い終わる前に枕が飛んでくる。
軽くはじくと、どうやらそれはダミーだったらしく、枕に隠すようにしてナイフが飛んでいた。
人差し指と中指で挟んで止める。
「――化け物」
「違うぞ、ヒーローだ!」
「うるさい」
次から次へと枕元の物が飛んできた。
全部避けたりはじいたりする。
遂にシーツまで飛んできて、次はどうする気なのかと思う前に――
――ベラルーシが飛んできた。
飛び掛ってきた、が正しい。
「君、本当に具合悪いのかい!?」
「悪いですこのうんこ野郎――!」
しばらく俺の上で暴れていたベラルーシは、やはり具合が悪かったらしく、しばらくすると大人しくなった。
「何なんですか貴方は」
ヒーローだ、と答えようと思ったのだけれど。
どうしてか、アメリカだよ、とそのまま答えてしまった。
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