4.普+?
3(↓の話)の普サイドの話。
でも戦争臭は少なめ。
さっきから兄弟祭りと銘打ちつつ当の二人の会話が極端に少ない件について……orz
* * *
全身に痛みを感じる事があった。
終始喧嘩ばかりしていた俺は、これでも痛みに慣れている方なのだが。
そういう、例えば斬られたとか殴られたとかとは種類の違う――鈍痛だった。
「っち……あの暴力女のフライパンより痛いってどういう事だ……」
痣が出来た訳ではない。
傷が見えた訳でもない。
だが――確かに痛かった。
ずきずきと、ずきずきと。
まるで病に犯されているみたいに。
――俺と言う存在そのものに対してじゃなく――この国の受けた痛みなのだろう。
例えば人間が。
例えば国土が。
奪われ傷つけられる痛みなのだろう。
「はっ……」
そんな物におびえる俺様じゃあ、ない。
だから気づいたらその病に絡め取られていて。
何処かよく分からない場所に来ていた時――抱いた感情を、俺は知らない。
安堵ではなかった。
痛みが消えただけだった。
それでもただ――弛緩した。
それが所謂開放、という奴だったのだろう。
「おい、俺は死んだのかよ」
死んだよ、と声が聞こえる。
「下はどうなった」
戦争は終わった、と声が聞こえる。
「どっちが勝った」
君達が負けた、と声が聞こえる。
「弟はどうしてる」
ぼろぼろだよ、と声が聞こえる。
「立ち直れそうか」
時間はかかるけど大丈夫、と声が聞こえる。
「そうかよ。まあこんな所に来なくって万々歳だぜ」
一人寂しくない、と声が聞こえる。
「……何言ってんだ! 一人楽しいぜ! はははは!」
そう、でも、と声が聞こえる。
「……何だ」
彼は君がいなくて寂しそう、と声が聞こえる。
「……ヴェストは俺が大好きだからな! 当然だろ!」
まあゆっくりしていってよ、と声が聞こえる。
「それも悪かねえが――まあ、後でな」
どういう事、と声が聞こえる。
「その前に姿を見せやがれ糞野郎が。神様だか天使様だかしらねえが、俺様と喧嘩しようぜ」
何で、と声が聞こえる。
「お前をぶっ殺して下に戻ってやるっつーこった!」
……そんな事言う奴初めてだ、と声が聞こえる。
「可愛い可愛い弟が、凹んで寂しがってるっつーのに俺がこんな所でぬくぬくしてられっか馬鹿! おら、さっさとかかって来い!」
しょうがないなあ、叶う訳ないのになあ、と声が聞こえて。
「っ……!」
息が出来ない。
巻きつくような不快感。
汗が滲む。
実際にまきつかれている。
口の中にまで何かをつっこまれて――いるみたいだ。
全身に鋭い痛み。
どう、もうやめたら、と声が聞こえる。
「――っやめるかよ――っ!」
どうして、と声が聞こえる。
「っ舐めんな! 俺はプロイセンだぞ――!」
もう君の国はないよ、と声が聞こえる。
「馬鹿が! 弟が――いるじゃねえか!」
口の中に入り込んでくる異物を噛み切る。
煙のようにつかみどころがない。
むせ返った。
それでも――無視した。
がむしゃらに無茶苦茶にやけくそでも。
勝算なんて知ったこっちゃねえ、戦いたいから戦うんだ。
俺は弟にそうやって教えた。
俺はそうやって生きてきた!
「――負けた」
誰かが目の前に、いた。
酸欠で死にそうな中――その馬鹿野郎は立っていた。
「君馬鹿ってよく言われない?」
「いわれねえよ――糞が」
「まあいいや。君みたいな馬鹿相手してらんないよ」
視界に移る金髪。
困ったようなプロイセンブルーの瞳。
「この子の元に、戻っておいで」
世界一可愛いそんな顔で、生意気に言い放つと。
俺の視界は再び――混濁した。
俺の弟にしてやる、とそういった時も黙って俺をじいっと見て、その顔が無表情でよくわからなくて、唯一読み取れる感情が寄せた眉根に浮んだ不愉快さのような物だけだったから俺はすぐに混乱して、だけどその後の俺何かが弟でもいいのか、ってそんな台詞で全てを安心させるような、そういう奴だった。
病気になっても怪我をしても黙って我慢して、ぶっ倒れるまでこっちに感づかせもしやがらねえで、その癖俺が怪我して帰ると心底泣きそうな顔をして、俺の怪我には絶対に気づいて手当てをして、俺が怪我する事に対する犯行なのかその後しばらく抱きしめさせてくれないような、そういう奴だった。
俺が抱き上げると一瞬手足をばたつかせて少し抵抗して、でも結局こっちに体重をかけてくれて、頭を撫でられると恥ずかしそうに頬を染めて、それはでっかくなってからも変らなくって、でかくなる度に俺は嬉しいけど切なくって、ついに抱き上げられなくなった時にはごめん、と謝ってくるような、そういう奴だった。
俺より色んな面ででかくなって、なのに俺に遠慮して、迷って困って、俺がそのことで馬鹿にされると刺されたような顔の後に怒りをあらわにして、でもとっくに俺がそいつを殴ってる事に気づくと、全く兄さんは、と言いながらも僅か微笑むような、そういう奴だった。
どこまでも真面目で、多分俺なんかよりずっと大人で、優しくって、周りの事考えすぎて気苦労ばっか背負ってるて、その癖それがわかりにくいからしょっちゅう誤解されて、それでも不器用に貫き通して、本当に強くて、でも幾らでかくなっても俺の弟だって事を忘れないでいてくれる、そういう奴だった。
だから俺は戻らなくちゃいけない、と思った。
せめてあいつが立ち直るまでは。
だって俺はプロイセン様だから。
それ以上に、あいつの兄貴だから。
久しぶりにあったあいつは、珍しく驚いた顔をして。
にいさん、と頼りない発音で俺の事を呼んで。
「はははっ! なーに情けねえ顔してんだよヴェスト!」
「にいさ、消えたんじゃ」
「俺様を誰だと思ってんだ!? お前の兄貴だぜ!」
「あ――」
「駄目な弟が心配で来ちまったぜ」
その時ヴェストは。
あの、幼い日以来見せなかった泣きそうな顔を――こちらに向けた。
そんなんだから心配なんだよばあか。
それは大分、責任転嫁だったかもしれない。
PR
はじめまして
2009/12/02(Wed)22:10
まるの、といいます。
すっごく素敵な小説読ませて頂きました!
心がホクホクしてます。
特に、普+独兄弟祭の2が凄く好きです!
普さんがカッコいい!!普憫じゃない!!(笑)
そしてリヒテンさんもカッコ良かったです。
ありがとうございました
新型インフルエンザや風邪が流行っています。
お体を大切にお過ごしくださいm(__)m
では、失礼します。
No.1|by まるの|
URL|Mail|Edit