イギリスは馬鹿だ、と彼は笑った。
「俺の事好きなのなんて、わかってるっていうのにさ。素直になればいいのに」
「……本当ですね」
同意を示すと、彼はまた大声で笑う。
空元気の用に、大仰に笑う。
「素直になった方がいいですよ、アメリカさん」
笑顔が凍りつく様を見て、ああ、面倒くさいと思った。
空気を読み違えてしまった。
否、わざと切り裂いたのだけれど。
「日、本?」
「本当に、イギリスさんが貴方の事好きだ何て思ってるんですか」
「何、――」
「思っていないんじゃないですか。本当は不安なのじゃないですか。だからそんなに――」
虚勢を張るのでしょう、と言った自分の言葉は信じられないほどに辛辣だった。
「傷つけて確かめているんのでしょう。彼が自分が好きに違いないと、言い聞かせているんでしょう、アメリカさん。いいでしょう、認めます。イギリスさんは確かに貴方が好きだった――今も好きでしょうね」
だけど、その感情が。
「その感情が弟へと向けるそれ以上の物ではないとは、考えられないんですか」
「日本」
「最後にイギリスさんに微笑みかけてもらったのは何時ですか? いえ、それ以前に、会話を交わしたのは何時ですか?」
「日本」
「私は昨日です。イギリスさんが私の家にいらっしゃったのですよ。それで――」
「日本!」
彼の顔が歪む。
幼い彼の怒りがそろそろ臨界点を超えることは、容易に想像できた。
「どうしますか。怒りますか、殴りますか、戦争ですか? 構いはしませんよ、私は貴方に抗わない。私の行動には規制がある。私は私を庇うことしかできない。それでもいいなら、どうぞ殴りなさい。ただ忘れないでくださいね」
彼の拳が振りあがる。
「力に訴えるということは、言葉に敵わなかったという事なのです」
ゆるゆると、振り下ろされる拳を見て、思わず微笑んでしまった。
「アメリカさん。アメリカさん。殴らないでくれてありがとうございます。これからも仲良く致しましょう」
彼は馬鹿だ。イギリスも馬鹿なのだろう。そして自分もまた、馬鹿だ。
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