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メッツェンメチル

ヘタリア・京極堂シリーズ等の無節操な二次創作と、オリジナル。傾向等は最古記事をご覧下さい。
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普+独兄弟祭り3

2009/02/22(Sun)04:08

3.独+普+連合

二回目の大戦の話。
どシリアス。
独が何か弱弱しい。

* * *

俺様の弟にしてやらなくもねえぜ! とそんな風に嘯いて、俺が何も言えずにいると急に不安気な顔をして、してやるって言ってんだよ! と少し表現を軽く言い直すような、それでもまだ黙っていると、泣きそうな顔をして、なりたくないのかよ? と聞いてくるような、そういう人だった。

戦い明け暮れて帰ってきて、しかし疲れなど微塵も見せずに煩く騒ぎ、人の頭をぐしゃぐしゃ撫でて豪快に笑い、勝敗なんて聞くまでもないだろと大声で言って、それから飲んだくれて倒れこんで俺に絡んできて、そこで一瞬顔をしかめたのでようやく怪我をしてる事をこちらに気づかせるような、そういう人だった。

俺を抱えあげるのが大好きで、何をしててもお構いなしに後ろから抱き上げては頭を撫でたり頬を寄せたり叩いたりして、俺が成長する度に今日は祝いの宴会だなと笑い、それから目を細めてそろそろ抱き上げれなくなるなと呟きながらも、俺が身長を越してからも何とか持ち上げようとするような、そういう人だった。

身長だけじゃなく、色んな場面で俺が成長して、周りからはまるで俺があの人を支配してるみたいに見られて嗤われてさげすまれて、それでも笑ってお前なら文句ない、他の奴ならぶん殴りに行くけどなと言って見せるような、でも嗤った奴はしっかり殴っておくような、そういう人だった。

やり方はまるで子供で幼くて、殴りたい奴は思いっきり殴る、本能にあくまで忠実に生きて、精一杯謳歌する事が丸ごと美徳で、でもその代わり守りたい奴の事は全力で守ってくれる、そういう面でもあくまで忠実な、兄貴面して、得意げで、幸せそうに立っている、そういう人だった。

だから、本当に、ああ、真面目な話。
何でこうなったのか論理的な説明はまるでつかなかった。

俺達の存在条件は、本当の所よくわからない。
国という定義で行くならば、領土があり、国民があり、主権があればそれで完了だ。
俺は気づいたらここにいたし、最初は国でも何でもなかったし、だから、多分、神様と言う奴は酷く適当だ。

領土だったら大戦の最中に失った。
国民さえもほぼ完全に入れ替わった。
文化など微塵ものこっていない。
主権など――ある訳もない。

そんな状態になってもその人は存在できていたし、だから俺も安心していたのだ。
ああそうだ、そんな簡単に俺達が消える訳がないのだ――と。

しかし、ある時。
同じく、大戦のさなか。

姿が見えなくなって。
探しても何処にもいなくて。
目の前から――消えてしまった。
何の前触れもなく。
消えるならこのタイミングはおかしいだろう、と言いたくなるぐらいに。
そんな拍子抜けさも、その人らしいといえなくも、なかったけれど。


「おーうドイツ。大戦前会ったっきりだな?」
「とりあえず正義は勝つって事さ!」
「やあ、ドイツ君。久しぶりだね。また君の事貰いに来たよ」
「話し合いなら早くやるある」
「そうだな……とりあえず座れよ」

「皆」

その時話し合うべきは。
自分がこの責任をどう取るか、という話だった筈で。
相応しくない質問なのは、わかっていた。


「兄貴を、知らないか?」


フランスの表情が硬直する。
イギリスが眉を顰める。

「座れ、ドイツ」
「ああすまない――だが、見当たらなくて」
「いいから座れ」

目の前に出された紙にあるのは、俺への数多くの要求。
確かに大事な話ではある、だが――

と。
目に付いた文字が、ある。


――ここに、プロイセン国家の解体を宣言する物である。


椅子が、倒れた。
机が大きく――揺れる。

「――ドイツ」
「どういう――事だ」
「プロイセンには固有の領土も僅かしかない。国民もいない。国とは――言えない」
「何の話だ!」

「領土が少ししかない?」

「お前達が奪ったからだろう!」

「国民がいないだと?」

「追い出したのはお前達だ!」

「国とは言えないなどと――よくもそんな――!」
 


「ドイツ」
ばん――とそれまで黙っていた中国が、机を叩いた。

「お前の言い分はわからんでもないある。いや、よくわかるあるよ。だが――略奪を、侵攻を、最初に始めたのは誰だったか、考えてみるよろし」

「お前の目の前にいる奴らが、何の被害も追わずにのうのうとここにいるのかどうかを考えてみるよろし」


誰だった?
ああ、そうだ――全部俺の始めた事じゃないか。
国民を追い出したのも、領土を奪ったのも。
俺のやった事じゃないか。

皆――ぼろぼろなんじゃないか。


「ドイツ君だけが悪いんじゃないよ」

その時のロシアは――何故だか妙に真顔だった。
いつもの張り付いている笑みは、どこにもない。
「ドイツ君が悪いんじゃない」ではなく――「ドイツ君だけが悪いんじゃない」と。
奴には珍しい、責任を分割するような言い方で。

「――そうだな」

本当に不思議な事に、同意したのはアメリカだった。
ああ、皆、今日は何だか、変だった。

「俺、平和がいいよ。面倒くさくないしさ」
「ああ――俺も賛成だ」
「大体野蛮ある、戦争なんて」
「うん。平和が一番だよね」
「――作ろうぜ、ドイツ」

平和を。

まるで慰めるような調子。
俺はそんなに酷い顔でもしてるのか、と聞きたくなる。
何だ、平和って、作ろうとはできるもんなんじゃないか。
作れるかはわからないけど。
平和がいいよと確認しあうことぐらい。
簡単だったんじゃないか。

なのに――どうしてこんなに長い間、気づかなかったん、だろう。

もっと早く気づいていれば。
もっと多くの人が助かって。
兄さんも生きてたかも知れない。
ああでも兄さんは戦うの生きがいみたいな人だったから――駄目だったかもな。
それは妙に笑えて来る妄想で。


「まあでも金は払うあるよ」
「中国てめえ空気読みやがれ!」
「はは、僕中国君のそういう所好きだよ」
「おめーに好かれても嬉しくねえある!」

一気に騒ぎ始めた元敵達に、お前ら静かにしろと言った。


嗚呼――贖罪を、始めよう。

 
その後、消えた時と同じぐらいのあっけなさでその人が、「駄目な弟が心配できちまったぜ」と姿を現したのは、それからしばらく経っての事だった。

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