祭りと銘打ってはみたけれど、実はこの二本しかまだネタ考えてないんだ。
試験後は別の兄妹の話を書くと決めているのでどうにかしたいです。
2.普+独+瑞+リヒ
現パロ、人名表記。
普+独兄弟設定、瑞+リヒも兄弟設定。
しかも独とリヒは小学生(^q^)
年の離れた兄弟なんです。
……すいません。
普→ギルベルト
独→ヴェスト、ルートヴィッヒ
瑞→バッシュ
でも貴族は普と同期? で、なおかつスイスさんとも同期だから、もしかして独は一人だけ年下なのだろうか。
その辺後で色々歴史調べてきたいと思います。
大体友人と「何で普と独共存しとるん?」とも思ってましたから、兄さん呼びはある意味納得です。
でも年下だったとして……ごついな……
でもそこがSU☆KI(うぜえ)
* * *
「おい、ギルベルト」
「ああ?」
無愛想な声に振り向いてみると、無愛想な隣人は無愛想に突っ立っていた。
何か用か、と声をかけると、渡された手紙がある。
「……授業参観のお知らせ? おい、何で俺がお前のにいかねえといけねえんだよ」
「我輩はもう授業参観がある年ではないのである! 親切で言ってやっているというのに失礼な奴め」
「親切って――」
「読まないんならすぐ返すのである」
ぷんすかしながら言う隣人を適当に手で制して、手紙を読む。
何の変哲もない授業参観のお知らせだった。
日付は明日。
貰ったのは二週間も前。
愛すべき弟の学校からの手紙だった。
そして自分は見ていない。
「あんのバカヴェスト――! また見せてやがらねえな!」
「……我輩も昨日やっと見つけたのである」
「……お前ん所は珍しいな」
バッシュの妹、リヒテンシュタインも同じ学校に通っているが――そして同学年だが――毎回、授業参観の手紙は見せている筈だった。
何故そんな事を知っているかと言うと、自分の弟は見せる気がまるでないその手紙を、毎回渡してくれるのが奴だからである。
何かあったのかも知れん、と呟いた手にはいつのまにか拳銃(らしきもの)が握られていた。
……エアガンかプラモだろう。この銃器オタクめ。
いや、エアガンかプラモじゃないとまずいだろう。
「とりあえず助かったぜ……帰ったらとっちめてやる」
「言葉はいいからとりあえず今度何か奢るのである」
* * * * *
「ヴェースト…………」
「!」
びく、と振り向いた幼い顔には僅かに汗が浮んでいた。
「俺が何言いたいかはわかってるな?」
「……何の事だ」
「ほーうそういう事を言うのか」
抱えあげて、視線を同じ高さに持ってくる。
じたばたと抵抗があるが、所詮は無駄というものだった。
「明日は何がある?」
「……学校だ」
「いつもの学校か?」
「……違う」
「何がある?」
「………………」
「お前いい加減授業参観俺に教えねえのやめやがれ」
割合傷つくんだが。
来て欲しくないのかと。
勿論言いはしないけれども。
つーかマジで来て欲しくないのかも知れない。
やっべ、泣きそうだ。
「今回は教えなくてもいいんだ」
弁解するように口を開く弟。
「何でだ? ああ?」
「先生が――『お母さんやお父さんにちゃんと見せるのよー』と言った」
「OK、殺す」
「殺さないでくれ!」
弟の担任はまだ教師になって日の浅い、若い女だった。
しかしそんな物は関係ない。その辺の気配りぐらいちゃんとしろ、教師なら。
これはバッシュの奴に教えて二人で殴りこみかもしれない、と考えているとにやけてきた。
悪人面してるぞ、と指摘されてやめる。
「よし、明日は意地でも行くからな、ヴェスト」
「……好きにしてくれ」
でも派手な格好で来るなよ、と念を押された。
あれは普段着だと思った。
* * *
算数の授業だった。
国語の時間に親に向けた作文を読むとか言うベタい展開はない。
途中隣のクラスに行くバッシュにあったが、やっぱり授業参観に行くより来てもらう方が似合う気がした。
言うと学校で戦闘になるので言わなかったが。
以前なりかけて、弟妹から止められたのは苦い思い出である。
弟を見れば背筋を真直ぐに伸ばし、きちんと教師のいう事を聞き、ノートをとっていた。
一体誰に似たのかしらないが真面目な性格である。
自分が小学生の頃――悪友とふざけ回ったり隣のクラスのお坊ちゃんに喧嘩ふっかけたり学年天下を取ろうとしたりで忙しかった気がした。
勉強した記憶がない。
大体授業の記憶もない。
(……いや、授業に出た記憶はあるぞ)
(あ、ありゃチョーク入れにトカゲ仕込んでたから成果確認しに出てたのか)
(黒板消し落としに新しい風を吹き込むのにも忙しかったな)
(一回教室中から黒板消し取ってきて、入り口縦一列に詰めた時は面倒だった)
(確かアントーニョがうっかり外に出たままになって入れなくなってたな……)
そんな事を思っていると、授業は終わってしまった。
ずっと弟を見ていただけなのに、妙に時間が早くすぎるものである。
一旦解散がかけられ、他のガキ共が親の前に群がる。
ヴェストは照れるように躊躇するように、それでも俺の元にやってきた。
思いっきり抱き上げてやる。
こんな事は年取った他の親共にはできないだろう。
「兄さんっ」
「よかったぜヴェスト! 帰りはお祝いに外食な!」
「何のお祝いだ……」
「せんせー、何でおとーさんおかーさんじゃないのに来ていいんですかぁ?」
そんな、吐き気のする、声がした。
賑やかだった教室が、一転静まり返る。
何の事を言ってるのか明白で、視線が集まっているのが鬱陶しい。
「なんで?」
「ちょっと、××君!」
「だって先生、お父さんお母さんにきてもらってねって行ったもん」
甘ったるい乳臭い声、うるせえ媚びんな糞ガキが。
周りの親共も何様子伺ってんだ、大体この糞ガキの親はどこにいるんだ。
にらみつけるように見渡せば、ガキの親は何とか辞めさせようとしつつも手を焼いている。
その程度のしつけもできねえのか、馬鹿野郎。
俺はいい、とりあえずいい、そんな言葉を視線をヴェストに向けるな馬鹿共が。
なおもしつこく「何で」と聞き続ける子供、小学生にしては大柄、生意気そうな目。
ガキ大将みたいなもんだろう、ああ俺にもこういう時代あったけな、その際平気でこういう事も行ったかもしれない、でもそんな事は知らない。
あの時俺の周りにいた大人は、俺がこういう事を言ったら納得するまで説明して口答えすりゃ殴っただろう、俺はそれで良いと思ってる。
真っ当になる気はさらさらないが、今弟にさげずまれるような人間にならなくてよかったと思ってる。
だから。
誰もできないんなら俺がやってやるまでだ。
結局の所理屈なんて関係なく、むかつくから。
そう思ってヴェストを下ろし、頭を撫で、その糞ガキの元に向かう。
緊張と静寂の満ちた教室に俺の乱暴な足音はよく響いたらしい、ガキはこちらに目をむけ、硬直した。
ああ、お前は今ガキ大将だろうが俺は昔っからそういう事ばっかして来たんだよ。
てめえがヴェストが嫌いでこんな事してんのかしらねえが、俺は気に入らない奴がいたらこんな嫌らしい大人のやり口しないで殴ったね。
だから、そうだ、どっちが良いのか何てしらねえが、俺はガキのやり方でお前を殴る。
まあお前がヴェスト殴った所で印象は最悪だったが、それでも俺がしゃしゃりではしなかっただろうよ。
「っ」
そう思ったのに。
当のヴェストに、止められた。
ヴェストは俺の前に立ち、あの糞ガキを庇うように両手を広げている。
今にも泣きそうな、情けない顔で。
「ヴェスト」
「やめてくれ、兄さん」
「お前は悔しくねえのか」
「悔しいが」
ここで何かしたら兄さんが悪者だ、それは嫌だ。
そういうそいつは本当、小学生にしては余りに大人で賢く優しく愛しい。
腹立たしさは健在、今すぐ殴ってやりたかった。
でも、やめた。
「おい、お前」
びくり、と体を震わせるが、そこはさすがに生意気盛り、「何だよ」と思ったより強気な返事。
これが中学ぐらいになると、力量差を知って逃げ出すか謝るのだ、と経験に照らして考える。
「――俺はこいつの親だ」
「……嘘だ」
「嘘じゃねえよ」
「だって兄さんなんだろ! それに知ってるぜ」
ルートは親がいないんだ、と勝ち誇った声。
ああやっぱり殴りたい。
だからせめて、言葉だけは、止めない。
「お前は今調子に乗って自分が強いって思い上がってるかもしんねえけどな、お前の親はお前を食わす為に一生懸命働いてお前の飯作ってお前の事可愛がってお前が病気になったら病院つれてって心配して、もっとガキの頃は乳のましてシメ換えてやって泣いたら泣きやむまで面倒見て寝なかったら寝るまで抱えあげて抱きしめて愛してやってたんだよ! 俺はいい、俺にそんな奴は確かにいなかった、赤ん坊の頃はしらねえが、俺は飯食うために自分で働いたし病気なったら自力で治した、心配された覚えも愛された覚えもない、だから俺に親はいない、それでもいいと思ってる、でもな、よく聞け糞ガキ、ヴェストには――」
「――そういう事は全部俺がやったんだ!」
「だから俺はこいつの兄貴で父親で母親で家族だ、何か文句あるか!」
あるなら殴る、と付け加えそうになって、そこは黙った。
ヴェストはともすれば泣きそうな顔をしていて、まずったかも知れない、と思う。
糞ガキは勢いに気圧されて涙目だったが、最近のガキには珍しく、粘り強く口を開こうとした。
次行ったら殴るかヴェスト連れて出て行こうと思ったそのときに。
こつこつこつ、と早足の小さな音。
俺の横をすり抜け、目を見開いたヴェストを避けて糞ガキの前に行き。
その頬をぱん、と叩いた。
渾身の力だったことが、糞ガキの頬の赤みからわかる。
驚くべき事にそいつは女子で、
もっと驚くべき事に、そいつはリヒテンシュタインだった。
気弱で、温厚で、優しく、性格は兄貴とは似てもにつかない。
そんなそいつが――自分より大きく、周りと比べても大柄な男子を、ぶった。
リヒテンシュタインは静かに声をあげる。
「ルートさんとギルさんが兄弟でないのなら――私と兄さまも兄妹ではありません」
「貴方が言ったのは、私達から家族を奪うことです」
「私達を否定することです」
「ギルさんが言ってくれたことは、私が本当に思ってることで」
「だから――嬉しかったです」
「ねえ、兄さま」
リヒテンシュタインが振りむくと、教室の入り口にはバッシュがいた。
妹の言葉に頷いたそいつは、いつもの不機嫌そうな顔をしている。
「……帰ろう、兄さん」
ヴェストは泣きそうだった。
でも、笑っていた。
だから俺は、満足だった。
連れ立ってでていこうとする俺達に、糞ガキは女に叩かれたショックを隠せず立ち尽くし、その母親は俺にすがりつくように謝ってきた。
そんな物は鬱陶しくて堪らなかったから手を振りほどく。
なおもよってくる母親を制し、バッシュが口を出した。
「……こやつは、昔、お前の子供に負けない悪ガキだったのであるが」
知ったような口利きやがって。
あ、知ってるのか。
「それでも今こうやって、一応、真っ当に育っている」
偉そうに。
お前が育てた訳じゃねえだろうが、馬鹿。
「もしお前の息子に大切な人間が出来た時に――そいつから軽蔑されるような人間にならないよう、育ててやった方がいいのである」
でも、まあ。
「それが我輩達がお前にできる最大限の助言で、しかしお前からしてもらう事など何もないのである」
言いたい事は――大体俺と同じだったので。
「だから――捨ておけ」
諸々の文句は、しまっておいてやることにした。
感謝しろよ、と思う。
今度こそ、と俺はヴェストの手を掴んで教室を出て行き――今回いい所とっていきやがった感のある兄妹もそれに続いた。
気は進まないが、このメンツで外食にでも行こうか。
そこは俺様の奢りに、しといてやるから。
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