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メッツェンメチル

ヘタリア・京極堂シリーズ等の無節操な二次創作と、オリジナル。傾向等は最古記事をご覧下さい。
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2024/11/26(Tue)16:49

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独墺

2008/03/14(Fri)21:01

「ドイツ! タイが歪んでいます、貴方らしくも無い」
「ん? ああ、悪い。では行って来る」
「このお馬鹿! 人が折角指摘したのですから聞き入れなさい!」
「行く途中で直す。仕事に遅れるからな」
「例え仕事に遅れようと、そんな見苦しい格好で出て行くことは私が許しません。貸しなさい」
「何故お前が許さないんだ……というか、今日はお前も仕事じゃなかったか」
「今日はコンサートがありますので、全会一致で休みになりました」
「…………」

どうなってるんだこの国は、と訝しげに見つめてみるが、顔を埋めているオーストリアが気付く風もない。
ネクタイを直す手つきすら優雅なのは素直に驚嘆するが、このままでは遅れるのは必至だった。
大体、そこまで大仰に歪んでいるわけでもあるまいし。
正直なところ、上司が夜型と言う個人的すぎる理由で夜中に会議があったばかりなので、このままだと仕事に行こうという決意が揺らぎそうだ。しかし、それでも仕事にはいかねばならない。それが仕事だからだ。

「オーストリア、もういい。直っただろう。悪かったな」
「……このお馬鹿さんが」
「う?」


ぐい、と襟首が引っ張られる感触。それを苦しいと思うまでも無く、首筋が開放される。

「おい、オーストリア!」


彼の手には、先刻まで自分の首に巻きついていたネクタイがあった。
どうした。ネクタイの結び方が気に入らなかったのか。しかし本当に遅れてしまう――


「休めばいいでしょう」


休む? 何故だ。ドイツにはわからない。ネクタイはそんなに重要な要素なのか、いやそれ以前にそれをとってしまったのはお前だろう、と考えた。そしてコンサートで仕事が休みになるお前と一緒にするな、とも。


オーストリアは言う。


「そんな寝不足で、仕事ができるものですか」


このお馬鹿、とオーストリアは再び繰り返す。
ああ、何だ――と、漸くドイツが納得したところで。


「悪いが、仕事には行く」
「ドイツ」
「それが仕事と言うものだろう」


不機嫌そうに眉根がよった。どうやら開放されそうに無かったので、その額に軽く口付ける。


「!? どい、」
「行ってくる」
「ああ! お待ちなさい、このお馬鹿!」

声を無視して駆け出すと、珍しく大声で「危ないですよ!」と声があった。
何の話だ、と思う前に、全身が殴られる感覚が、ある。


* * *


「……このお馬鹿さんが」
「…………」

車にぶつかった。
幸い動き出したばかりでスピードが出ていなかったため、軽くぶつける程度――だったのだが。
一応大事をとって、仕事は休む事になった。
ベッドに寝転がり、隣に座るオーストリアからの説教を耳に入れる。

「ドイツ。聞いているのですか?」
「ああ、聞いている。ところでお前、俺のネクタイはどうした?」
「聞いてはいるけれど真摯に受け止めていないことはわかりました」

呆れたように溜息を吐くと、それから「タイは没収します」とオーストリアは言った。


「……何故だ?」
「罰ですよ」

よく意味のわからない、非論理的な台詞だとは思った――が。
結局感情がそれを許そうとするので、受け入れてみせる。
抵抗を見せるには眠たすぎたので、ただ。

今日はゆっくり、眠る事にした。

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