歴史上の人物の凄まじい捏造ですご注意を。
あくまで捏造であり、妄想であり、事実史実に必ずしも忠実とは限りません。
で、且つちょいグロです。
* * * * *
溜息を、吐いた。
重たい思惟は白い空気へと変換され、やがて闇に溶ける。
魂が抜けてしまうようだ――しかし、吸い込む夜の空気は麗しい。
尖らせた石を振り下ろす。
この細腕には少々大きすぎる物体は、真下にあった物体を余すところなく潰していく。
液体が飛ぶ。
血かとも思ったが、どうやら別の物のようだ。
悪臭が漂っている。
何度も何度も、振り下ろす。
人間の形をした物がその形すら失った時、己の息は随分乱れてしまっていた。
荒い息を何度も吐き出し、ゆっくりと体の中心にある音を整わせる。
「ねえさま」
「……何の用だ」
夜に馴染む低い声が、恍惚の瞬間を奪っていく。
振り向かずとも想像がつく、そこには少年が一人、いる筈だ。
「ねえさまはまた、そんな汚いものを弄る」
「汚いからこそ浄化しているのだ」
「でも、その分ねえさまが汚くなる」
「私は汚いか」
「とても」
そうか、と呟いてから石をその場に置く。
「もう止めたらいい、ねえさま」
「止める必要はない」
「ねえさまは次の王になる。皆の太陽にならないと。太陽は、自分を汚しちゃ、いけない」
「昼の私は太陽だ。夜の私はただの女だ」
「女は死体を更に殺すの?」
「否、知らない」
「ねえさまはその内殺されてしまうかもしれない。これはきっと、悪い事」
「お前しか見ていないのに」
「月が見てる。ねえさまが汚れるところ、見てる」
「ならばお前が月になれ」
そうして私を見逃してくれ、と言った自分は微笑んでいただろうか。
「いいよ」
少なくとも、弟は微笑んでいた。
* * * * *
PR