二つ目。
徐々にデトックスする方向で。
なるべくほのぼのを目指したいものです。
2.
ロシアの姉妹達の事は知っていた。
姉とは話した事もあるが、妹の事はリトアニアから聞いたっきりである。
ロシア自体とは余り会話をしないし、大体彼は姉妹の事を余り話さない。
リトアニア曰く、とてもロシアの妹とは思えないほど可愛いのだそうだ。
確かに見た目は可愛いとはいえなかったが――しかし。
「リトアニアも存外趣味が悪いなあ」
ああいう棘、と言うより毒の強いのが好みなのだろうか。
でもまあ――面白い、とは思った。
そもそも自分はあの北国が好きではないのだ。
その妹にちょっかいをかけるのも、悪くない。
一体あの男はどんな反応を見せるのだろうと思うと、それはそれで楽しい考えだった。
「なあ、ロシア! 俺達もっと仲良くしてもいいんじゃないか?」
「そうだねえ、僕は君とはこれ以上ないくらい仲良くしてるよ?」
これ以上仲良くなんて考えられないよ、と普通の会話に混ぜて、さらりと嫌味を吐くロシア。
暗にこの程度の仲の良さが最大限の譲歩だといっているのだろう。
「いやあ、人間挑戦が大事だと思うんだよ!」
「僕達人間じゃないけどね。大体君みたいな若造が言っても少しも言葉に含蓄がないし」
「ははは、喧嘩売ってるのかい?」
僕らが喧嘩すると皆が泣くから止めておこうよ、と言うロシア。
全くその通りだと思った。
「でも、突然どうしたの? アメリカ君がそういう事言い出すって事は、また、ろく――じゃなかった、とんでもない事考えてるんでしょ?」
「別にそうでもないぞ」
ベラルーシを俺に預けてみないか、と言うと――ロシアは一瞬今まで見たこともないような表情をした。
その顔が愉快だったので、それだけでも言った価値はある。
「ベラルーシ? 知り合いだったっけ?」
「この間友達になった所だ!」
「何か、これから悪い事するから人質としてベラルーシ渡せって言ってるように聞こえるんだけど」
「俺は悪い事なんかしないぞ、ヒーローだからな!」
「"僕に都合の"悪い事だよ」
「――何もしないさ」
ただの暇つぶし、とそれは多分嘘ではない。
ただの嫌がらせ、とも言えるのだけれど。
「まあ――いいけどさ」
ベラルーシが僕の弱点になると思ってるんなら間違ってるよ、アメリカ君。
それは何の牽制のつもりなのだろうか。
そんな事はどうでもいいと言うのに。
御しがたいあの態度が、面白いと思った。
そもそもそれが第一なのか、と自分の思いにふと気がつく。
世界に生まれた日に見た極寒の大地のように凍てつく瞳は、蠱惑的にこちらを誘うのだ、と。
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