その5。
今更ながらベラちゃんの口調がやっぱりよくわかりません。
喋らない子なのかしらん。
後米ベラ露って書いたはいいけど恋愛要素が薄いです。
ナンテコッタイ
* * *
無表情に楽しんでるベラルーシが面白くて堪らない。
昨日から散々嫌がっていて、今日だって具合が悪いだの何だのとベッドにへばりついていたのを、無理矢理に連れてきたのだ。
しかし半日遊んだ今、密かに輝く瞳が本当におかしかった。
「楽しいかい?」
「楽しい訳ありませんこの野郎」
悪口に力が入っていない。
それに思考する余裕はないという事らしい。
ジェットコースターあたりでへばったり、ホラーハウスでびびったりさせてみるのも楽しいだろうなあと思ったのだが、割合全部楽しんでいた。
女子としての可愛げには欠けたが、楽しいならそれはそれでよい。
何に乗りたい、とも何が欲しい、とも言わないが、視線が向いているので丸分かりだった。
こんなに素直で単純な彼女は始めてである。
お土産を買ってやると言ったら、こちらの散財を狙うかのように大量買いし始めた。
内訳を聞くと、九割ロシアで一割が自分とウクライナに、と言っている。
元ソ連の仲間達はどうなんだ、と聞いてみると、今その存在を思い出したという顔をして(失礼な話だ)、大箱のクッキーを一つ買った。
ついでに俺からリボンを買ってやると、俺から貰うのは心底嫌そうに、しかし貰った物は嬉しかったらしく(どうやら白黒の垂れ耳の犬がお気に入りだ)、無言で握り締めていた。
そんなこんなで、一日中退屈せずに過ごせたのだった。
「ははは! 楽しかっただろ!」
兄さんと来れればよかった、と失礼な呟きが隣から聞こえる。
なので、レターセットを買ってやった。
「……何ですか」
「手紙でも書いたらどうだい? と思ってさ」
「……手紙」
しかし兄さん兄さんむかついたので、お気に入りの白黒犬ではなく、ショッキングピンクのヒョウの奴にしておいた。
驚いた事に、ベラルーシは、消え入りそうな声で、ありがとう、と俺に言った。
驚いた。
ほんとに驚いた。
「間抜け面」
容赦のない指摘が入るが、本当に俺はその時間抜け面をしていたに違いない。
実際それぐらい驚いたのである。
心臓がばくばく言っていた。
「びっくりした! 心臓が痛いぞ!」
「高血圧なんじゃないですか、油物大好きメタボ男」
「心配してくれるのかい?」
「血管詰まらせればいい」
「はははありがとう!」
本当に、こういうのは、面白い。
何にでも挑戦したくなるのはお国柄――文字通り国柄なのだ、何だか愉快である。
最初は会話を引き出すだけでもゲーム感覚で楽しかったが、その一歩先まで進めたらしい。
じゃあ次の挑戦は笑わせるにしてみようかな、と考える。
「明日は何処に行きたい?」
「……兄さんの所」
「手紙で我慢しろよ!」
「クレムリとホワイトハウスのホットラインを使いたい」
「そんなに重要事項なのかい!」
こくり、と頷いたベラルーシ。
何だか癪だったので、頭をくしゃくしゃにしてやった。
噛み付かれた。
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