男と少年の声が響いている。
「カナダ! 皿を割ったのはお前か!」
「ふあ……!? ぼ、僕割ってな……い、よ……?」
「……アメリカがそう言ったんだがなあ。ならどうして最近俺を避けるんだ?」
「だって……イギリスさんは、僕の事、嫌いなんでしょう……?」
「はあ!? な、何でだよ? そんなわけないだろうが!」
「だって、アメリカが……」
「アメリカ?」
アメリカァ! と男の大声が聞こえた。
「あいつ何やってんだよ……ったく……!」
捜索が開始される。
「……バカリス」
屋根裏に潜んでいた少年は、不満気に唇を尖らせていた。
「バカナダ」
三人で仲良く何か――したくない。
二人の笑顔が、嫌いだ。
二人きりのときはそうでもないけれど、三人でいるときの笑顔は嫌いだ。
自分を置いてけぼりにして、二人で笑う二人が嫌いだ。
二人とも、自分とだけ仲良くすればいい。
「あーあ」
三人でいるのはつまらない。
一人きりはもっとつまらない。
そう思いながら、瞳を閉じる。
何時の間にか、眠ってしまっていたようだった。
* * *
「……カ! アメリカ!」
「…………ん」
がたがたと揺さぶられる。薄く開いた瞳に、カナダの心配そうな顔と、イギリスの怒った顔が見える。
「何やってんだお前は!」
ああ、怒られる。皿を割った事だろうか、それをカナダの所為にした事だろうか、それともカナダにイギリスが嫌いと言っていたと、嘘を伝えた事だろうか。
「どこ言ったかと思っただろうが!」
「アメリカぁ……」
あれ、何かおかしいなあと――目を完全に開く。
「か、勘違いするなよ……お前が心配だったわけじゃないんだからな!」
イギリスの言葉を聞いて、カナダが微笑んだ。それを見て何かいいかけ――結局、照れたようにイギリスも笑った。
「……あれ」
それは二人分の微笑だったにも関わらず、少しも不愉快じゃなくて。
気がついたら自分も笑っていたから、ああ三人分なんだ、とだけ思った。
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