ゆるりゆるりと、毒を這わせる。
体内に染みた毒は生きている。
内部で永遠に生き続け、彼を犯し続けるのだ。
だから彼は、毒を殺し続けなければならない。
ぼくがずっと、ころしてあげる。
「それは――妄想の話ですか、ロシアさん」
「どうだろうね。どう思う? 日本君」
「妄想ですね。妄言でしょう。それでないのなら、世迷言です」
「妄想に妄言に世迷言、か。この時点では確かにそうかもしれないね」
握った小瓶をゆるりと揺らす。
中の液体が、ゆるりと揺れる。
「だけど、具現化した妄想や妄言や世迷言ほど、怖い物も中々ないよ」
「そうかもしれませんね」
「怖くない?」
「怖くなど」
「本当に?」
身動きの取れぬ拘束の元、彼は笑う。
傷だらけでぼろぼろで、それでも笑う。
「いいね、日本君。素敵だ」
そんな君が好きだよ、と告白と共に唇に毒を流し込む。
咳き込む事すら緩されずに喉を伝う毒は、きっと彼を殺し続けるだろう。
「私も、貴方が好きですよ」
それでも毅然と笑って、そんな冗談を言ってみせた彼は、矢張り愛しいと、思った。
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