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メッツェンメチル

ヘタリア・京極堂シリーズ等の無節操な二次創作と、オリジナル。傾向等は最古記事をご覧下さい。
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2024/11/26(Tue)14:40

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中日

2008/03/20(Thu)19:55

「日本を――選ぶあるか」

彼ら彼女らは申し訳無さそうに頭を垂れて、それでもはっきりと肯定した。
自らの血の赴くまま、日本の民となることを選択した。

「ふん――まあ、それもいいあるよ」

嗚呼、あの小さな島国に、一体どれほどの価値があるというのか。
価値――否、これは魅力の類だろう。
一体何が人をひきつけ、一体何が彼を彼でいさせるのか。

「好きにするよろし。ただ――」

育てたのは我らである事を忘れるな、と諭せば、人間達は涙を流して謝罪した。
別に構いはしないのだ、彼を生みの親とするなら自分は育ての親だ。
それは誇らしい事だ。
そしてそれは、絆だ。

ああ、日本に惹かれる彼らのことを笑えない、と失笑する。
久しぶりに、あの気の弱い頑固者の顔が見たくなった。

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No.22|ヘタリアComment(0)Trackback()

中+英

2008/03/18(Tue)20:53

汚らわしいとばかりに、手が振り払われた。
不愉快に思うより先に傷ついた自分がいて、それが少し不愉快だった。

「触るな――」

黒い瞳は切れ上がり、こちらを強く睨みつけてくる。
睨む、というような表現では温すぎる――焼き殺されそうな、眼だった。


「中国」
「お前は、阿片を吸った人間を見たあるか」
「……ああ」
「はっ……見てあの様あるか。尤も我が言える事ではないあるが」

恥さらし、と声を荒上げずに中国は糾弾する。


「恥を知るあるよ――よくもまあ、あんな薬の輸入差し止めが大義名分になったあるね。無理を通すにも程って物があるとは思わないあるか?」
「――――」


九票だ。
たった九票の差で、国が動いた。


「言っておくあるよ、英国――」


アジアの麗人は、艶やかに笑んで見せる。


「我はこれからも、お前に笑いかけるある。話しかけるし、冗談も言うし、まるでそのとおりにするあるよ。だけど――勘違いするな、」


我はお前を許さない、と微笑みながら中国は続けた。


「華の誇りを汚したお前を、許さない。絶対に許さない。責めるのは今だけだが、決して許したりしない。あの国民達を見て、あんなにしたお前たちを思って、その上攻め込み何もかも奪おうとしたお前たちを許せない」
「ちゅうご――」

「そうある。我は中国。世の中心に華は咲く――枯れたなどと、ゆめゆめ思うな」


毅然と言い放った後で中国は、「ごめんある」と、そこだけ酷く純粋そうな笑みで言う。
それは反則な、謝罪だと思った。

No.20|ヘタリアComment(0)Trackback()

英米加(米と加がちび)

2008/03/17(Mon)19:47

男と少年の声が響いている。

「カナダ! 皿を割ったのはお前か!」
「ふあ……!? ぼ、僕割ってな……い、よ……?」
「……アメリカがそう言ったんだがなあ。ならどうして最近俺を避けるんだ?」
「だって……イギリスさんは、僕の事、嫌いなんでしょう……?」
「はあ!? な、何でだよ? そんなわけないだろうが!」
「だって、アメリカが……」
「アメリカ?」

アメリカァ! と男の大声が聞こえた。

「あいつ何やってんだよ……ったく……!」


捜索が開始される。



「……バカリス」

屋根裏に潜んでいた少年は、不満気に唇を尖らせていた。


「バカナダ」


三人で仲良く何か――したくない。
二人の笑顔が、嫌いだ。

二人きりのときはそうでもないけれど、三人でいるときの笑顔は嫌いだ。
自分を置いてけぼりにして、二人で笑う二人が嫌いだ。

二人とも、自分とだけ仲良くすればいい。


「あーあ」

三人でいるのはつまらない。
一人きりはもっとつまらない。

そう思いながら、瞳を閉じる。
何時の間にか、眠ってしまっていたようだった。


* * *

「……カ! アメリカ!」
「…………ん」

がたがたと揺さぶられる。薄く開いた瞳に、カナダの心配そうな顔と、イギリスの怒った顔が見える。


「何やってんだお前は!」


ああ、怒られる。皿を割った事だろうか、それをカナダの所為にした事だろうか、それともカナダにイギリスが嫌いと言っていたと、嘘を伝えた事だろうか。


「どこ言ったかと思っただろうが!」
「アメリカぁ……」


あれ、何かおかしいなあと――目を完全に開く。


「か、勘違いするなよ……お前が心配だったわけじゃないんだからな!」


イギリスの言葉を聞いて、カナダが微笑んだ。それを見て何かいいかけ――結局、照れたようにイギリスも笑った。


「……あれ」

それは二人分の微笑だったにも関わらず、少しも不愉快じゃなくて。
気がついたら自分も笑っていたから、ああ三人分なんだ、とだけ思った。

No.19|ヘタリアComment(0)Trackback()

加+露

2008/03/16(Sun)21:14

僕は無関心が怖いんだよ、とロシアが言った。

その時自分は確か彼に怯えていて、みっともなくがたがたと震えていたのだ。
よくわからないタイミングではじき出された言葉は、くるくると宙を舞う。


「よく言うよね。無関心と嫌われてるのだったら、嫌われてる方がいいってさ」

僕は正にそのタイプなんだ、と笑われる。


「君はどう思う?」
「僕は――」


僕は嫌われる方が嫌です、と自分は言った。


「嫌われるのは嫌だし、怖がられるのは怖いです。無関心は、確かに寂しいけど――僕の事皆が忘れているのは、寂しいけど」


それでも、優しい言葉があった。笑顔があった。皆がいた。嫌われてなんか、なかった。


「僕は無関心でも、皆の傍にいたい」
「凄いね、カナダ君」

ロシアは惜しみなく、賞賛の言葉と拍手を与えてきた。
暖かい、冬の国には似合わないような笑顔と共に。



「でも僕は君が嫌いだ」

No.18|ヘタリアComment(0)Trackback()

スイス×日本

2008/03/15(Sat)20:08

海、という物を見た。

別にそれがはじめての海だったとか、そういうわけではない。
自分は内陸にあり、確かに海とは縁遠かったのだが。
用兵として雇われ、各地に言った頃に、ふと眺めたことがある。

そして嗚呼、とその度思うのだ。


「スイスさん。綺麗ですね」
「そうであるか?」


日本は苦笑した。しかし奴は自分と違い海など見飽きているだろう、と思う。
決して綺麗ではないと思っている訳ではないのだ。


細波立つ海は、美しく、広大で、恐ろしく冷たそうだ。
それは幼少の頃より慣れ親しんだ、否苛まれ続けた、自然の象徴のようだった。

自らの足元が冷たくなるのを感じ、振り切るように海へと向かう。
上半身の服を脱ぎ捨てると、日本が慌てたような声を出した気がするが、聞こえない。
靴を脱ぎ、そのまま海へ踏み出すと、予想に違わず冷たかった。

恐怖に駆られそうになる自分を叱責し、前へと。
ずぶずぶと、押し込めるように自らの肢体は海へと吸収される。

すぐに立てなくなり、そのまま泳ぎだした。
海へともぐる、顔を上げる。空気を奪い、再び。
足に絡みつく服が邪魔だ、と思いながらも腕を動かし続け、ふと背泳ぎに切り替える。


太陽が眩しく、目を細めた。
ああ、海の上にも空はあるのだと――納得する。


「っ!」

足が硬直した。

筋肉が動かない――攣っている――気付いたもののどうにもできない。
飲み込まれそうになる。そうだ、自然は肝要で残酷なのだ。
何処までも受け入れてみせ、何処までも飲み込もうとする。


酸素が口から漏れていく。足は未だ動かないままだ。髪の毛で視界が見えない。重力から限りなく開放され、それでも落ちていく。海の色は、黒かった。時折下りてくる光が、愛おしい。

海の中で泣く事は出来ぬのだろうか。
ならばここも、さほど悪くはない。


体が抱きとめられる、感覚があった。
重力へと抗う体の動き。
空気の漏れる水音が、二つ不協和音を奏でる。
水を掻く音が――一つ。


「……っはぁ!」
「……………」
「スイスさん! 大丈夫ですかスイスさん!」

大丈夫である、と言おうとして――口の端から水が零れた。


「スイスさんっ」

目が霞んでいる――霞んでいるのに、日本の表情がわかる。
随分無様な表情だ、だが笑えない。

胸に僅かな圧迫感。応えるように心音を返す。
首筋に指が当たる、顎を反らされ、空気の供給が少し楽になる。
しかしそれ喜ぶ間もなく、唇から酸素が与えられた。


「……ケホ……ッ」
「スイスさん!」
「……大丈夫、であ、る」

起き上がる。足の攣りは既に終わっていたが、念の為にマッサージを行った。


「ふう……」
「馬鹿ですか貴方は!」
「!」

目を見開いて日本を見る。相変わらず、無様な表情をしていた。だけど矢張り――笑えない。
ああ、これは心配の表情だったのだ、と漸く気がつく。

「体操もせずに全力で海に泳ぎだす人がいますか! こちとら海の男ですからね、海の怖さは重々承知してるんですよ! ヨーロッパの方々は『よく自然は克服するもの』なんて嘯きますが、克服できないのに向かっていくのは馬鹿です!」
「……お前、そんなに自己主張出来たのであるな」
「誤魔化さないで下さい!」
「……悪かったのである」

剣幕が凄かったので、思わず謝った。


「少し――魔が差したのだ」

或いは海に魅せられたのか。


「全く……スイスさんがそこまで考えなしだとは思いませんでした」
「我輩も日本がそこまで怒るとは思わなかったがな」
「怒るに決まっているでしょう!」
「借りは返すぞ」
「そういう問題ではありません! 大体借りだとか貸しだとか――」
「とりあえず手始めに、先刻の酸素を返しておくのである」
「え?」


目の端で、海が揺れている。
誘うように、細波が引いていく。
ああ、だけどもう、誘われてなどやるものか――と、こっそり、ほくそ笑んだ。

No.17|ヘタリアComment(0)Trackback()

独墺

2008/03/14(Fri)21:01

「ドイツ! タイが歪んでいます、貴方らしくも無い」
「ん? ああ、悪い。では行って来る」
「このお馬鹿! 人が折角指摘したのですから聞き入れなさい!」
「行く途中で直す。仕事に遅れるからな」
「例え仕事に遅れようと、そんな見苦しい格好で出て行くことは私が許しません。貸しなさい」
「何故お前が許さないんだ……というか、今日はお前も仕事じゃなかったか」
「今日はコンサートがありますので、全会一致で休みになりました」
「…………」

どうなってるんだこの国は、と訝しげに見つめてみるが、顔を埋めているオーストリアが気付く風もない。
ネクタイを直す手つきすら優雅なのは素直に驚嘆するが、このままでは遅れるのは必至だった。
大体、そこまで大仰に歪んでいるわけでもあるまいし。
正直なところ、上司が夜型と言う個人的すぎる理由で夜中に会議があったばかりなので、このままだと仕事に行こうという決意が揺らぎそうだ。しかし、それでも仕事にはいかねばならない。それが仕事だからだ。

「オーストリア、もういい。直っただろう。悪かったな」
「……このお馬鹿さんが」
「う?」


ぐい、と襟首が引っ張られる感触。それを苦しいと思うまでも無く、首筋が開放される。

「おい、オーストリア!」


彼の手には、先刻まで自分の首に巻きついていたネクタイがあった。
どうした。ネクタイの結び方が気に入らなかったのか。しかし本当に遅れてしまう――


「休めばいいでしょう」


休む? 何故だ。ドイツにはわからない。ネクタイはそんなに重要な要素なのか、いやそれ以前にそれをとってしまったのはお前だろう、と考えた。そしてコンサートで仕事が休みになるお前と一緒にするな、とも。


オーストリアは言う。


「そんな寝不足で、仕事ができるものですか」


このお馬鹿、とオーストリアは再び繰り返す。
ああ、何だ――と、漸くドイツが納得したところで。


「悪いが、仕事には行く」
「ドイツ」
「それが仕事と言うものだろう」


不機嫌そうに眉根がよった。どうやら開放されそうに無かったので、その額に軽く口付ける。


「!? どい、」
「行ってくる」
「ああ! お待ちなさい、このお馬鹿!」

声を無視して駆け出すと、珍しく大声で「危ないですよ!」と声があった。
何の話だ、と思う前に、全身が殴られる感覚が、ある。


* * *


「……このお馬鹿さんが」
「…………」

車にぶつかった。
幸い動き出したばかりでスピードが出ていなかったため、軽くぶつける程度――だったのだが。
一応大事をとって、仕事は休む事になった。
ベッドに寝転がり、隣に座るオーストリアからの説教を耳に入れる。

「ドイツ。聞いているのですか?」
「ああ、聞いている。ところでお前、俺のネクタイはどうした?」
「聞いてはいるけれど真摯に受け止めていないことはわかりました」

呆れたように溜息を吐くと、それから「タイは没収します」とオーストリアは言った。


「……何故だ?」
「罰ですよ」

よく意味のわからない、非論理的な台詞だとは思った――が。
結局感情がそれを許そうとするので、受け入れてみせる。
抵抗を見せるには眠たすぎたので、ただ。

今日はゆっくり、眠る事にした。

No.16|ヘタリアComment(0)Trackback()

普→洪→墺

2008/03/13(Thu)22:59

「変態女」

言葉を受けて、女は振り向いた。不機嫌そうな表情が、顔にべったりと張り付いている。

「今のは私に言ったの?」
「他に変態がいんのか?」
「あんたとか」
「何でだよ。ストーカーも大概にしとけ、気持ち悪ぃ」

眉根が更に寄せられた。
ハンガリーの視線の先には、オーストリアがいる。
それは今に限ったことではなく、いつでもだ。

「ストーカーなんてしてないわよ。あんたこそ、毎回毎回やってくるけど……実はオーストリアさんをストーキングしてんじゃないの!?」
「何で俺があの馬鹿貴族ストーキングしねえといけねえんだよ!?」
「じゃあ何でいつもいつも会うのよ!」
「さあ何でだろうなあ! 考える頭があるんなら自分で考えたらどうだ!?」

ハンガリーは口をつぐみ、首を傾げた。
沈黙の後、

「実は私が好きだとか?」
「…………!」
「なーんて! あはははは、面白くない冗談言っちゃった」
「……………」
「あ、オーストリアさん行っちゃう!」


更に沈黙が、続いた。

No.15|ヘタリアComment(0)Trackback()

米英日(米英要素強い)(日本が微黒)

2008/03/12(Wed)19:56

イギリスは馬鹿だ、と彼は笑った。

「俺の事好きなのなんて、わかってるっていうのにさ。素直になればいいのに」
「……本当ですね」

同意を示すと、彼はまた大声で笑う。
空元気の用に、大仰に笑う。


「素直になった方がいいですよ、アメリカさん」


笑顔が凍りつく様を見て、ああ、面倒くさいと思った。
空気を読み違えてしまった。
否、わざと切り裂いたのだけれど。


「日、本?」
「本当に、イギリスさんが貴方の事好きだ何て思ってるんですか」
「何、――」
「思っていないんじゃないですか。本当は不安なのじゃないですか。だからそんなに――」


虚勢を張るのでしょう、と言った自分の言葉は信じられないほどに辛辣だった。


「傷つけて確かめているんのでしょう。彼が自分が好きに違いないと、言い聞かせているんでしょう、アメリカさん。いいでしょう、認めます。イギリスさんは確かに貴方が好きだった――今も好きでしょうね」

だけど、その感情が。

「その感情が弟へと向けるそれ以上の物ではないとは、考えられないんですか」
「日本」
「最後にイギリスさんに微笑みかけてもらったのは何時ですか? いえ、それ以前に、会話を交わしたのは何時ですか?」
「日本」
「私は昨日です。イギリスさんが私の家にいらっしゃったのですよ。それで――」
「日本!」


彼の顔が歪む。
幼い彼の怒りがそろそろ臨界点を超えることは、容易に想像できた。

「どうしますか。怒りますか、殴りますか、戦争ですか? 構いはしませんよ、私は貴方に抗わない。私の行動には規制がある。私は私を庇うことしかできない。それでもいいなら、どうぞ殴りなさい。ただ忘れないでくださいね」

彼の拳が振りあがる。

「力に訴えるということは、言葉に敵わなかったという事なのです」

ゆるゆると、振り下ろされる拳を見て、思わず微笑んでしまった。


「アメリカさん。アメリカさん。殴らないでくれてありがとうございます。これからも仲良く致しましょう」


彼は馬鹿だ。イギリスも馬鹿なのだろう。そして自分もまた、馬鹿だ。

No.14|ヘタリアComment(0)Trackback()

米と加

2008/03/09(Sun)15:43

「カナダは俺といるのが嫌なんだろう!」

UFOでも見つけたような顔で、アメリカはカナダを指差して笑った。
カナダはいつものように困惑を表情に乗せて、アメリカに対応する。

「……突然どうしたんだよ」
「君は俺といると嫌そうな顔をするからな! その原因を推理してみたのさ」
「へえ。シャーロックホームズみたいだね」
「全然違う。奴はイギリスのだからな」
「そうだね。全然違う。別に僕は、君といるのが嫌なんじゃないよ」
「?」

アメリカは首を傾げた。

「君が存在してるのが、嫌なだけ」

カナダはいつもの純朴そうな微笑を浮かべて、アメリカにいう。
アメリカは「そうか!」と納得した顔で大きく微笑み、次の瞬間カナダに殴りかかった。

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よくわからない話の2

2008/01/20(Sun)19:20

「ただ幸せにしたかっただけだったんだけどな」

その人は扉の前に立ち、そう呟いた。
大きいその体から、大きい手が伸びてきて、力強く力強く、僕の頭を撫でる。
ぬくも、り。

「俺には母さんを幸せにできなかった、」

ごめんな、□□。その声は僕には届かない。

「にげるの?」

そう問い返せば「ごめん。逃げる」と正直な解答。
嘘の得意な人であったのに、それが出来ないほど追い詰められていたのだろうか。
それとも、最後だから嘘でその場を誤魔化す必要などないということ、なのか。


「前に話したけど、俺は幸せな家庭とか――幸せな食卓とか、全然知らなかったから」

目の前にいる男の人は、本当の父親の顔を見たことが無い。
存命はしていたのだろうけれど、籍を置いていない。
俺の母親は多分妾か何かだったのだろうと、言った。

その男性の父親は七人いる。
僕の祖父は、七人足す一人で八人。


「だから俺は、幸せな家庭、作りたかったんだ」
「本当――父さんって」

その男性は。
僕が今まで見た中で一番不幸な人間は。
僕の、父親は。

「女運、悪いよね」
「かもな。家族運が悪いだけかもしれないけど――いや、やっぱ女運は悪くない」
「どうしてそう思うの、父さんの離婚遍歴見たらそうは、思え、ない」
「離婚遍歴とか、言うなよ。だってほら、あれだよ」

お前に会えたから運は良かったのさ、我が娘。
そんな風に、嘯いた。

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