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メッツェンメチル

ヘタリア・京極堂シリーズ等の無節操な二次創作と、オリジナル。傾向等は最古記事をご覧下さい。
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2024/11/26(Tue)14:57

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普洪(学ヘタ)

2009/01/27(Tue)20:26

ケース1:普段憎まれ口しか利かない女子の部屋の前で自分の名前を聞いた時。

「ギルベルト?」
「うん。ギル君」
「あの馬鹿男がどうかしたの?」
「えーっとね。エリザ彼と知り合いじゃない? 紹介してほしいの」
「へ? 紹介して欲しいって――正気?」
「何よ。失礼な言い方ね!」
「あは……ごめんごめん。びっくりしすぎちゃって」
「まあいいけどさ」
「ていうか突然どうしたの」
「何がよ」
「あんな駄目男、つきあってもいい事ないわよ?」
「そんな事ないわよ。大体エリザだって長い付き合いでしょ」
「え――まあ私は、腐れ縁って奴で」
「ふうん。まあいいじゃない。してよ、紹介」
「紹介ねえ……別にしたって構わないけど」
「けど?」
「あいつ、目付き悪いし、柄悪いし、頭悪いし、性格悪いし」
「っぷ……いいすぎっ」
「そんな事ないわよ。夢見てるんなら今のうちに諦めた方がいいわよ」
「別に夢見てる訳でもないんだけど。目付き悪いって言うけど、彼の目元セクシーじゃない?」
「えー? まあ確かに格好いいと言えなくもないけど」
「でしょ?」
「うーん……馬鹿なとこも可愛いといえなくもないし」
「うんうん」
「なんだかんだで優しいとこもなくはないし」
「…………」
「柄は悪いけど――性根まで腐ってる訳じゃないし」
「……あー何か、やっぱいいわ、紹介」
「へ?」
「エリザ、好きなんだ、ギルベルトの事」
「な――何言ってんのよ、何で私があんな男――」
「ふうん? 無自覚って奴か、まあいいけど」
「ちょ、ちょっと待ちなさいって……っ!」
「じゃあね! ばいばい!」
「――もー、何なのよー……」



「……こっちの台詞だぜ」



ケース2:普段憎まれ口しか利かない男子の部屋の前で自分の名前を聞いた時。

「エリザだと!?」
「そ。エリザちゃん」
「はあ!? てめえ何言ってんだ!?」
「いや、だからさ、エリザベータちゃん、紹介してくれよ」
「お、お前馬鹿か!? あんな暴力女相手によく」
「それはお前が決める事じゃないだろ。お前仲良くなかったっけ?」
「ばっ……仲良くなんかねえよ!」
「あっそ。じゃあ他の奴に頼むわ」
「ちょっと待ちやがれ!」
「何だよ……今やけに煩いな、ギルベルト 」
「あの女は、止めとけ」
「だからそれはお前が決める事じゃないだろ」
「いや、お前はわかってねえな。あの女が如何に暴力的でがさつでイカれてるのかってな」
「……お前はわかってんのかよ」
「わかってるっつの。お前、あいつ今でこそ顔もスタイルもいいけどよ、昔は男みたいだったんだぜ」
「そんなもんだろ。今いいならいいじゃん」
「っ駄目に決まってんだろ!」
「何ムキになってんだよ」
「ムキになんかなってねえよ! 大体あの女は」
「女は?」
「……ローデリヒの坊ちゃんに、惚れてん、だよ……」
「……ギル、お前、泣いてる?」
「泣いてる訳ねーだろうが! だから諦めろって親切心で言ってやってんのに……っ」
「……わかったよ。俺が悪かった」
「わかりゃ…・・・いいんだよ」
「お前が惚れてんだよな、昔っから」
「はあっ!? んな訳ねーだ」
「じゃあ俺が狙って言い訳?」
「それはっ」
「駄目なんだろ。素直になれよ」
「それは俺の為じゃ……!」
「はいはい。わかったわかった」
「てめえ話を――って切りやがったな!」



「……何で、泣くのよ」

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No.33|ヘタリアComment(0)Trackback()

仏×ジャンヌ(歴史上の人物捏造)(暗い)

2009/01/26(Mon)15:49

かみさまがおしえてくれたの、と少女は笑った。

「こんなに素敵な人がここにいるって事」
「こんなに愛しい人がここにいるって事」
「この人の為に生きるって事」
「それが幸せなんだって事」

ああ、人じゃないんだっけ、と屈託無く言う少女。
この少女は戦場で、驚く程に人が変る。

その豹変振りはまるでとりつかれたようで。

神がかっていて。

病んでいて。

恐ろしく。

美しかった。

「ジャンヌ! もういいお前は下がってろ!」
「私の心配をするぐらいなら下がっていなさいフランス! 私は、」


私はあなたの為に戦っているのです。


気高く崇高で。
俺を愛しているというには、余りも純潔な感情。
それは多分、恋なんかじゃなくて。
そして、愛でも、ないのだろう。


「いたあい……痛いよお……」
「ジャンヌ? 大丈夫か? 見せてみろ」
「フランス……」

肩に傷を負って泣く少女。
この少女はただ幼いだけ。
幼すぎて、愛せない。
だけど、自分の事を愛してくれるのは、恋してくれるのは、この時の少女だけ。
嗚呼、何て、上手くいかないんだろう。


そして最期に、俺は少女が女へと変わり行く瞬間を、見た。


「神様あ……熱いよ……フランス……っ……たすけ、」

それは禍々しい光景だった。
少女は泣き叫び、大人たちは笑い、そして火は焚かれている。
俺は動く事を許されなかった。
動こうとすると、押さえつけられた。

その時。

泣き叫んでいた少女の顔が、歪んでいた少女の顔が――変った。
聖女のように神々しく――堂々と、安らかな、顔に。

一瞬、時が止まった、気がした。


「仰せの通りにいたします」


澄み渡る声。
その瞬間、俺は、助けようともがくのを、やめた。

だって彼女はもうあの少女ではなかったから。
少女でなくなった彼女は、戦場の時と同じように、俺の感情を拒むのだろう。
拒んで、それで幸せなのだ。
一人の中には二つのしあわせが、ある。

それは多分普通に恋し愛するしあわせであり。
国のため神のため、誰かのために生きる幸せなのだろう。

そしてそのどちらの場合でも――彼女は、俺を、愛した。


「死んだぞ」「火を止めろ」「さらし者に」「聖女ではないことを」「ただの人であることを」

だから半分焼けた彼女の姿が晒された時も――俺は動かなかった。
下半身を露出させられた侮辱的な姿、それでも。
少女の彼女ならばそれを侮辱ととっただろうが。
戦場の彼女ならばそれを相手にもしなかった、だろうから。



「――何も、残してくれなかったんだ」
生まれ変わる体さえ、残してもらえなかった。
悼まれるべき灰され、残してもらえなかった。

俺に昔語りを強要した男は、静かに言った。

「らしくもないな、フランスよ」
俺はお前の言い訳なんぞ聞きたくない、とせせら笑う。
彼女と似た所のある皇帝は――続けた。

「惚れた女も守れずどうした? それでも貴様はフランス人か。良いか」

――不可能と言う言葉は、フランス的ではない。
後の世に「我輩の辞書に不可能と言う文字はない」で知られる、この男の口癖を――辛辣に言い放った。


「ふん。まあいい。その少女の事を俺は全面的に評価させてもらおう。名誉挽回という奴だ――で、何と言ったかな、その少女」

彼女の名前。
彼女の名前は――

「――ジャンヌだよ」


「ジャンヌ・ダルク」

No.32|ヘタリアComment(0)Trackback()

リト→ベラ→露(↓と微妙に関係あり)

2009/01/12(Mon)19:26

その時彼女は美しく澄み渡る泉の深淵を覗き込んでいた。

深淵に臨んで薄氷を踏むが如し、という言葉があるらしい。
それを教えてくれたのは驚くべきことにポーランドで、ポーランドはイタリアから聞いたらしく、という事は多分イタリアは日本から聞いた表現なのだろう。
その詩的な響きのするイメージから行くと、元々は中国の言葉なのかもしれない。

深淵に臨んで薄氷を踏むが如し。
それはつまり、深淵を覗き込むときのように、薄氷の上を歩くときのように、こわごわと慎重に行動する、という意味なのだそうだ。
しかし実際にその深淵を覗き込んでいる彼女には、慎重さの欠片もなかった。

身を乗り出して、入水するみたい。
しかしそんな事を実際にする訳もないと、その一枚の絵画を眺め続ける。


と。
彼女が身を乗り出した。

「ベラルーシちゃん!」

慌ててかけよると、自分が駆けつけ終わる前に、彼女はあっさりと水から顔を上げた。

「…………」
「…………」
「…………」
「えっと……大丈夫?」

にらみつけられている。
可愛い顔だった。

「何、してたの?」
「兄さんが」
「ロシアさんが?」

何かとってこいとでもいわれたのだろうか。
なら手伝おう、と思ったところで。

「兄さんが、笑いあいたいって言うから」
笑おうとしてた、とそれは無口な彼女にしては珍しく、長い台詞だった。

本当に好きなんだな。
ロシアさんの事。

「笑えた?」

それには返事をせずに、彼女は再び泉を覗き込む。
鏡の代わりなのだろう泉。
近づこうとすると、睨まれる。

「……駄目かな?」
「水がゆれる」

鏡がなくなる、と言う意味なのだろう。
まあ僕自体を嫌がってるんじゃなくてよかった――そう思った。

そのままの位置で、動かないように、彼女の努力を見つめる。
指で頬を吊り上げ、必死に、ひたすらに必死に、微笑もうとする、彼女。
止めたくて、止めたくて、そのままでいいって言いたくて。
でも、きっと、彼が望んだ事ならば、彼女は僕のいう事など聞きはしないのだろう。

その時。
風も無いのに。
水がゆれて。
鏡は壊れ。
彼女の顔が――
波紋に歪む。

同心円状の波紋の中心に、一粒の水滴。
また一つ。
また二つ。
彼女の目からこぼれ落ちる。

「ベラルーシちゃ……っ」
「来ないで」

はっきりとした――今度は明確に僕自身を拒絶した――声だった。

「慰めなんていらない。愛情なんていらない。貴方がくれる何も欲しくない」

わかってたよ。
泣いてる間だけでも慰められてしまうほど、か弱い女の子じゃない事ぐらい。
普段はどうだか知らないけど。
あの兄を思う時、彼女は酷く真直ぐだ。
真直ぐで、依存してて、愚直なまでに。

それでも愛しかった。
それでも可愛かった。
それでも――愛した。

だから君が少しも嫌がっていない事ぐらい承知の上で、ロシアさんに食いかかってしまう。
君の服の傷や。
君の頬の痣や。
君の首の跡や。

だって全部見えるから。
君は彼からもらった全てを、誇らしげに見せ付けるから。

「ベラルーシ」
「そう。私はベラルーシ」

貴方はロシアじゃないから興味はないの。
彼女の言葉は逐一、彼女の持つナイフよりも営利な刃物だった。

No.30|ヘタリアComment(0)Trackback()

露ベラ露(暗い)(病んでる)

2009/01/12(Mon)01:17

「兄さん」
「兄さん兄さん」
「結婚して兄さん」
「一つになりましょう兄さん」
「愛しているの兄さん」

「兄さん」

妹は自分にそう言ってくれる、ほとんど唯一の存在だった。
だから、本当は、大切に大切に、しなくちゃいけない。
わかってる。
わかってた。

「うるさいよ、ベラ」

愛してくれるから傷つけた。
傍にいてくれるから殴った。
必要としてくれるから――今自分の腕は彼女の細く白い首にある。

「――兄さん」
「気持ち悪いよ、君」

本当に僕が欲しかったものは。

暖かい世界、ヒマワリの咲く世界、平和な世界、皆いいこな世界、自分を受け入れてくれる世界、自分を愛してくれる世界、自分を普通に愛してくれる世界。

彼女の愛情は、普通じゃない。
気持ち悪いぐらいに一直線で、吐き気がする程依存してる。
そんなのが欲しいんじゃない。
もっと、互いに笑いあう小さな幸せ、そんなもの。
冬のように激しくは無く、春のように軽やかな、夏のように爽やかな、秋のように穏やかな。

「君とは笑いあえないし――大体君笑えないしね」

「嬉しい、兄さん」

ベラルーシはこちらが物怖じしそうなほど真直ぐな瞳で、言い切った。

「何、が」
「いつも兄さんは逃げてばかりだから。私を気持ち悪いと思うのは、私の事を考えたからだし、私に直接そう言ってくれるのは、私と向かい合ってるからだわ」

それが、嬉しい。
ベラルーシは言う。

「僕は君を殴るよ」
「喜んで受けるわ」
「僕は君を嫌うよ」
「喜んで愛すわ」
「僕は君を――殺すかもしれない」

「喜んで兄さんのために死にましょう」

気持ち悪いぐらい一直線で。
吐き気のするほど依存してて。
愚直なまでに裏切らなくて。

だから、愛しくて。

「私はロシア、白ロシア」

「兄さんの影、兄さんの光」

「兄さんの妹、兄さんの母」

「兄さんの恋人、兄さんの愛人」

「兄さんの全て、兄さんが全て」

「私はロシア、白ロシア」

「私は――ベラルーシ」



こんな僕を愛してくれて。
こんな僕を必要としてくれて。
だから僕は彼女を愛さなきゃいけなくて。
そんなの関係なく、必要で。

ごめんね、と心の中だけで呟く。
いいわよ、と現実で返事があった。

彼女はロシア、白ロシア。
僕の片割れ、僕の全て。
彼女の名前はベラルーシ。
僕と彼女は――同じもの。

No.29|ヘタリアComment(0)Trackback()

独墺

2008/07/14(Mon)21:03

「甘ッ!」
「黙ってお飲みなさい」

カップに入れられた液体を口に含んだ瞬間、ドイツは叫んだ。
そのまま吐き出しそうになるのを、オーストリアに止められる。

「お下品です」
「しかしお前……何だこの甘い酒は……」
「……このお馬鹿さんが」

何だそれは。
わからないのなら結構です。

何故かぷんすかしている模様のオーストリアに、ドイツは首をかしげる。
とりあえず原因となった液体を眺めて、もう一度口に含んだ。

「……甘い」
「でしょうね」

はちみつ酒ですから。
はちみつ酒? お前、それは。
何か文句がありますか。
……いや、ない。

ゆっくり、飲み下すように甘ったるい液体で喉を潤す。


それは古代からの、蜜月の名残。



* * * * *
昔の欧では形式的略奪婚が一般的で、一ヶ月間新婚夫婦は二人きりで隠遁生活を送る。
その間にはちみつ酒を飲むそうです、と新たに得た知識から(笑)
略奪婚の方も書きたいなあ。

No.28|ヘタリアComment(0)Trackback()

米日

2008/05/28(Wed)22:20

「どうして君達は古い物をそんなに有難がるんだい?」

戯れだった。
しかし、本気の問いではあった。

「達……と、言いますと」
「君とか、イギリスとか、ギリシャとかもかな……あ、中国も微妙にそうかもしれない」
「そうですねえ。年寄りだからですかねえ」

明らかに誤魔化しだとわかる台詞である。
むくれたこちらの様子がわかったのか、目の前の男は苦笑してみせた。

「それは所謂価値観の相違という奴です、アメリカ君。説明したってあなたは納得しないでしょうし、多分理解も出来ないでしょう。だからそういうものだ、としかいいませんよ」
「何だそれは、」

まるで大人の言い訳じゃないか。貴方だっていい大人でしょう、と苦笑はやまない。

「桜を綺麗だとは思いませんか?」
「そりゃ思うさ。君がくれた桜は俺の家にあるぞ」
「要するにそういう事なんですよ」
「桜は古い物か?」
「桜は新しい物なんですか?」

男曰く、桜は枯れ、そしてまた新たに木が生える。そんな事を随分と長く繰り返して来た、だから桜は古い。
だけども、桜は新しい芽をつけ、咲き誇る。それを毎年繰り返していくだろう、だから桜は新しい。

「……まあ、では、我々の価値観は桜が綺麗だという事で一致するという事で」

まとめるようにそういってから「とりあえず桜でも見に行きますか」と男は立ち上がった。

No.27|ヘタリアComment(0)Trackback()

独・普・墺・瑞

2008/05/06(Tue)19:51

「おいヴィッヒ! 俺様が来てやったぜ!」
「閉めろオーストリア」
「わかっていますとも」
「おい……気持ちはわかるが可哀相だろう……」
「気持ちはわかるとか言うな!」
「お下品です」
「この周囲であいつが一番煩いのである」
「……それもそうだな」
「ちょっ……納得してんじゃねえ!」
「冗談である」
「お下品なのは本当ですけどね」
「……うるせえこの坊ちゃんが。大体お前ら仲悪ぃんじゃねえのか」
「少なくとも貴方よりは嫌いじゃありません」
「右に同じである」
「…………」
「からかうのもその辺にしてやれ……泣いたらどうするんだ」
「ばっ……泣くわけねえだろうが!」

「オーストリア、お茶を入れてくれ」
「わかっていますとも」
「おい。ヴルストばかりではないか。チーズが食べたいのである」
「チーズならこっちにあったぜ。安い奴だけどな」
「……財政難は何処も同じだ」
「……全くである」

「今日は妹連れてこなかったのか?」
「リヒテンシュタインの事であるか? ……貴様らのような俗物の前に連れて来るわけないのである」
「よし表出ろやあ!」
「永世中立国を舐めるなである!」
「戦ってる時点で中立じゃないんじゃないか……?」

「このお馬鹿さん達が! 少しの間も静かに出来ないのですか。お茶が入りましたよ」
「一応聞いておくが、その『達』の中に俺は含まれていないだろうな」
「お前に馬鹿とか言われたくねえよバーカ」
「貴様らと同類に見られるのは不愉快である」
「ぐだぐだというのならお茶を飲むのをお止めなさい」

「……美味いな」
「うむ。美味い」
「しかし茶とヴルスト一緒にしばくってどう何だよ」
「他に無かったんだから仕方ないだろう」
「上品ではありませんが、このメンツならば別に構わないでしょう」
「どういう意味だ」
「そのままの意味です」

No.26|ヘタリアComment(0)Trackback()

露日露(何か露さまブームらしい)

2008/04/15(Tue)21:59

ゆるりゆるりと、毒を這わせる。
体内に染みた毒は生きている。
内部で永遠に生き続け、彼を犯し続けるのだ。
だから彼は、毒を殺し続けなければならない。

ぼくがずっと、ころしてあげる。

「それは――妄想の話ですか、ロシアさん」
「どうだろうね。どう思う? 日本君」
「妄想ですね。妄言でしょう。それでないのなら、世迷言です」
「妄想に妄言に世迷言、か。この時点では確かにそうかもしれないね」

握った小瓶をゆるりと揺らす。
中の液体が、ゆるりと揺れる。

「だけど、具現化した妄想や妄言や世迷言ほど、怖い物も中々ないよ」
「そうかもしれませんね」
「怖くない?」
「怖くなど」
「本当に?」

身動きの取れぬ拘束の元、彼は笑う。
傷だらけでぼろぼろで、それでも笑う。

「いいね、日本君。素敵だ」

そんな君が好きだよ、と告白と共に唇に毒を流し込む。
咳き込む事すら緩されずに喉を伝う毒は、きっと彼を殺し続けるだろう。

「私も、貴方が好きですよ」

それでも毅然と笑って、そんな冗談を言ってみせた彼は、矢張り愛しいと、思った。

No.25|ヘタリアComment(0)Trackback()

露米露

2008/03/23(Sun)01:29

愚かしいよね僕達は、と呟きそうになってやめた。
その時彼はとても泣きたさそうな顔をしていて、それを眺めるのに精一杯だったからだ。


平和へと世界が進んでいく一方で、僕と彼は静かに争いを始めている。
それはとても愚かな事だ。世界中が平和に歓喜し平和を享受しようとする今、僕達は再び――否、三度になるのか、大戦ののろしの準備をしていた。

誰も争いなど望んでいないというのに。
互いの喉元に銃口を突きつけながら、僕達は笑う。
そこにあるのは信頼ではなく、自分が相手を殺せば相手からも殺されるという殺伐とした確信。
兵器はどんどんと増殖していた。

オーバーキル。

明らかに、殺しすぎだ。


「ロシア。諦めろよ、いい加減」
「それは君だろ、アメリカ君」

銃口が更に押し付けられる。どうせこの距離では大して変わらないというのに、不安なのだろうか。
彼の行動に答えるように、自分も彼の喉元に銃口を押し付ける。


「戦争は終わったんじゃなかったのか?」


ああ、彼がそんな事言うなんてとても意外だ。彼は戦争が好きなのだと思っていた。争いはともかく、その後の勝利を愛し、勝利を誇っているのだろうと。

正直自分は争いと言うのが好きではない(これは他方から意外だと言われるが)、他人から傷つけられるのなどまっぴらだ。カドメイアの勝利など、欲しくない。


「戦争は終わったよ。そしてまた、始まるんだ」


戦争を終わらせるには僕達は互いを疑いすぎた。結局はそういうことなのだろう。

No.24|ヘタリアComment(0)Trackback()

露日

2008/03/21(Fri)21:12

「きみがすきだよ、にほんくん」

耳元で轟音を掻き鳴らされた所為で麻痺していた耳に、幾度目かの告白が届いた。
時に理由のように、時に結果のように、時に冗談のように、時に本気のように。
叫ばれる愛は今日も笑顔で銃弾と共に在る。


「其うですか。其れは其れは、有難う御座います」


再び銃声。耳鳴り。音が聞こえなくなる。その刹那、ロシアの唇が動いた。何を言っているのだろう。聞こえない。だが、聞こえなくていい。彼の言葉など聞きたくない。人を傷つけ、罵り、呪う唇の動きなど見たくも無い。


「僕は君を僕の物にしたい。君が僕の物になるならどうなっても構わない」

デッドオアライブ――生死を問わずさ、と彼は嘯く。
それは重罪人に張るレッテルでこそあれ、思い人に囁く言葉ではない。


「日本人は、従わされるのが好きだって聞いたけど。従ってはくれないの?」
「違います。我々は従わされるのを好いて居る訳では無く、従う価値を人に見出すだけの事」
「それは遠まわしに僕に従う価値はないって言ってるの」
「春巻に包んだ云い方で申し訳無い」
「そうだね、僕にはあわない。正直に言ってみてよ」

嗚呼、そんなチャンスがあるとは思わなかった。
自分はにっこりと笑って、誰に憚ることもなく、音を振るわせた。




(あ な た が だ い き ら い で す !)

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